(8) 浮野の里(5)
やっと探し当てた「浮野の里」には、どこの施設にも見られる破壊の跡が
なかった。昔ながらの田園風景が残っていた。人の手を最小限に加えた施設
と言うには、あまりにも自然な懐かしい田園に囲まれた里の風景だった。嬉
しかった。古い日本の風景がそっくり残っていると言ってもよい。
お金儲けに目のくらんだ、各地の施設と違って、控えめな東屋と展望施設
が控え目に作られ、湿原には木道が設けられているばかりの簡素なところだ。
遠くからやってきた甲斐があった。人影のまばらなことも気に入ってしまっ
た。
直ぐ横に、土建屋の残土置き場がなかったらもっと素晴らしかったのだが
これだけが目障りだった。日本の国土を八つ裂きにした土建屋行政に拘わる
者には、自分の金儲け以外、目に入らぬものと見える。だから、観光施設の
前に残土を積み上げて何も感じないのだろう。
ゆっくり見て回っても。2時間もあれば、浮野の里は見尽くしてしまう。
周囲に足をのばせば、田植えを終えた稲田に早苗の緑が初々しく風に揺れて
いる。満々と水をたえた用水の岸辺にはスズカケの大木やヤナギの大木があ
った。ヤナギの大木の所を曲がると門構えの旧家の前に出た。白壁の練り塀、
アカマツの大木の下に頑強な門がある。思わず、「いいなあ」と立ちつくし
てしまった。
(注)「浮野の里」は埼玉県加須市にある。交通の便がわるいので、
訪れる人は少ない。
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